教室にいなかったから、まだ朝練から戻っていないのだろう。
終わったところで声をかければ、すこしは話す時間があるはず。
靴を履き替え、グラウンドに出る。朝練が終わり、片付けをしているところだった。
遠くに陽太の姿が見える。清水さんと楽しそうに話している。笑い声がここまで聞こえてきそうなほど。
見たくなかったな、と胸が痛む。
せっかくついた決心が、その姿を見ただけで、また怯みそうになる。
邪魔しちゃ悪いかも……やっぱり後にしようか……いやそれじゃ今までと変わらないし……。
悶々としていると、
「何やってんの?葉山」
いきなり後ろからヒョコッと関口くんの顔がのぞいた。
「ひいっ!?」
びっくりして、思わずのけぞってしまった。「呼ぼうか?あいつ」
守屋くんが、ニヤリと笑って言う。
あいつ、とは、もちろん陽太のことだろう。
「用、あるんでしょ?」
わかっていると言わんばかりの顔で言われて、みるみる顔が熱くなる私。
こんなところで見てたらたら、そう思われて当然だよね。というか、実際そうなんだけど……。
すると守屋くんがいきなり手を振って、
「陽太ー!葉山がおまえに話あるってー!」
いきなり大声で叫んだ。
「ええっ!?」
そこにいた全員が一斉にこちらを向いた。清水さんも、目を丸くして見ている。
私は慌てて守屋くんを止めた。
「そ、そんな大声で……!」
「だって大声じゃないと聞こえないじゃん?」
「守屋くん、声大きいから聞こえるよ……!」
公開処刑だ……あたふたしているうちに、陽太がこっちに向かって歩いてくる。