「光里、おはよーっ」
「おはよう」
私は机に鞄を置いて挨拶を返す。
「なんか嬉しそう。いいことあった?」
と言うと、待ってましたとばかりに美咲がうなずく。
「昨日、赤坂先生にお祝いの演奏したの。すっごいよかった。この前のコンクールのときより一体感あったかも」
「赤坂先生、喜んでくれた?」
「すっごく。あの赤坂先生が涙流すなんてびっくり」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。もう号泣。最高のプレゼントだって」
それほどみんなの演奏が心に響いたんだろう。
誰かが自分のために心を込めて演奏してくれるなんて、誰だって嬉しいはずだ。
「光里のおかげだよ。ほんとにありがとう」
美咲が手を取って言った。
「そんな、私は何もしてないし……」
それにあれは、私の提案じゃないし。
「でも、よかった、喜んでもらえて」
嬉しそうな美咲に、私は宣言した。
「今から陽太のとこ、行ってくる」
「えっ」
美咲が目を丸くする。
「今まで言えなかったこと、全部、言ってくる」
「光里いぃーっ」
驚きつつまじまじと私の顔を見つめていた美咲が、いきなり抱きついてきた。
「なんか今の光里、カッコよかった」
と美咲が言って、両手をわたしの肩に置いた。
「いってらっしゃい。頑張ってね!」
「うん。ありがとう」
伝えたいことがある。
それは、今しかできないことだから。