屋上に続く階段の前には、昨日の夜はなかったはずの『立入禁止』の黄色い看板が、再び置かれていた。
もしかして、昨日はあらかじめ聖がどこかに隠していたのかもしれない。
やっぱり聖は、不思議な男の子だなと思いながら、その横を通り過ぎて階段を下りた。



ーーゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのます

小さい頃、この歌の意味を知って怖くなった。
これってどういう意味?と何気なくお母さんに尋ねたら、笑いながら教えてくれたのだった。
漢字で書くと、『指切り拳万、嘘ついたら針千本飲ます』。
『つまりね、嘘をついたら、指を切られて、1万回殴られて、針を千本飲まされるってこと。それくらい、約束を守るのはいけないってことよ』
私は震えあがった。そして一度した約束は絶対に破らないと心に誓った。

『今度何かされたら、絶対に言えよ。光里を泣かす奴は俺が許さないから』

約束だからな、と陽太は念を押した。

『わかった。じゃあ陽太が困ってるときは、私が助けるよ』

そして私たちは指切りをした。

約束したのに、私はその約束を守れなかった。
言えなかった。私は陽太に守ってもらうばかりで、何もしてあげられないまま、離れてしまった。
でもーー臆病な私は、もう卒業する。

『約束しよう』

『いちばん大切な人に、気持ちを伝えるって』

もう二度と、約束を破らないって決めたから。