「そうか、やっぱりね」
とおじさんは微笑みながら言った。
「陽太くんは、光里ちゃんにあげたんだね。あれを」
「……はい」
光里、こういうの好きだろ、と陽太は言った。
好きだと思った。この歌が。陽太がくれた物だから、もっと好きになった。
大好きな人と離れてしまった。だけどすべて失ったわけじゃない。それでも好きな気持ちまでは消えない。
「はい、どうぞ」
おじさんは人のいい顔で言った。差し出されたのはお店のロゴが入った袋入りのCD。ロゴ入りの袋なんていつの間にできたんだろう。非売品と言いながら、ちゃんと売り物みたいに渡してくれるところに、娘さんへの愛を感じた。
「ありがとうございます」
私は頭を下げて袋を受け取った。
「光里ちゃん」
とおじさんは言った。
「君にも歌を贈りたい人がいるのかい?」
「はい」
そうかい、と言って、おじさんは何度かうなずいた。
「またいつでも来なさい。今度は陽太くんも一緒にね」
「…………」
私は胸が詰まる思いで、頭を下げてお店を後にした。
「はい」とは、嘘でも言えなかった。
とおじさんは微笑みながら言った。
「陽太くんは、光里ちゃんにあげたんだね。あれを」
「……はい」
光里、こういうの好きだろ、と陽太は言った。
好きだと思った。この歌が。陽太がくれた物だから、もっと好きになった。
大好きな人と離れてしまった。だけどすべて失ったわけじゃない。それでも好きな気持ちまでは消えない。
「はい、どうぞ」
おじさんは人のいい顔で言った。差し出されたのはお店のロゴが入った袋入りのCD。ロゴ入りの袋なんていつの間にできたんだろう。非売品と言いながら、ちゃんと売り物みたいに渡してくれるところに、娘さんへの愛を感じた。
「ありがとうございます」
私は頭を下げて袋を受け取った。
「光里ちゃん」
とおじさんは言った。
「君にも歌を贈りたい人がいるのかい?」
「はい」
そうかい、と言って、おじさんは何度かうなずいた。
「またいつでも来なさい。今度は陽太くんも一緒にね」
「…………」
私は胸が詰まる思いで、頭を下げてお店を後にした。
「はい」とは、嘘でも言えなかった。