信号が青に変わり、スクランブル交差点で待っていた人たちがぞろぞろと動きはじめる。
その中でふいに立ち止まった女の人がいた。知り合いを見つけたのか驚いた顔で男の人に声をかける。男の人も立ち止まり、笑顔で挨拶をする。どこかよそよそしく、でも声をかけずにはいられなかったという感じ。忙しなく人が行き交う交差点の真ん中で立ち止まって頭を下げあう2人。そこだけ時間が止まったみたいだった。やがて信号が点滅しはじめ、2人は同じ方向に歩いていった。
何があったんだろう。2人はこれからどこに行くんだろう。もしかしたら少し話すだけで、どこにも行かずに別れるのかもしれない。
でも、羨ましかった。再会できること。一度離れてしまっても、どこかで会えるかもしれない。私がこの場所を離れたら、もう一度会うことはあるんだろうか。
私が会いたい人は、誰だろう。
まだこの街に立っているのに、私の身体は少しずつ、この地から離れているみたいだった。
忘れちゃいけない、と目的を思い出す。
そうだ、今日ここに来たのは、聖のためだった。