◯
放課後。教室を出て帰ろうとしたとき、
「葉山!」
呼び止められて、足を止めた。
振り向いて驚く。そこにいたのは、守屋くんだった。
「……何?」
また何か変なことを言われるんじゃないかと、つい警戒してしまう。
「あのさ、ちょっといい?」
「うん……」
守屋くんはお調子者キャラだけど、サッカーが上手で陽太と並ぶ人気者だ。女子の視線をちらほら感じる。廊下で話すのは避けたほうがよさそうだ。
校舎を出て、人気のない場所を歩く。守屋くんは無言で、私の前をずんずん歩いて行く。
どこまで行くんだろう……と心配になっていると、
守屋くんが体ごと振り向いた。そしていきなり、ガバッと頭を下げた。
「この前は、ごめん!」
突然のことについていけず、私はポカンとする。
「え……?」
「みんなの前でいきなりああんなこと言って……葉山の気持ち、考えてなかった」
守屋くんは頭を下げたまま言う。
「あのあと……カラオケ出てから、陽太に怒られた。人の気持ち考えろ、誰にでも知られたくないことくらいあるって」
「え、陽太が……?」
びっくりした。私が帰ったあと、そんなことになっていたなんて。
「うん。めちゃくちゃ怒ってた。なんでそんな怒るのかわかんなかったけど……めったに怒ることないあいつがあんなに感情むき出しにするなんて、俺、相当まずいことしたんだってことは、わかった。だから、何も言わないままだと気が済まなくて。ごめん、本当に」
「い、いいよ、そのことは。私ももう、気にしてないし……」
そういえばーーどうして気づかなかったんだろう。あの場にいて、やりとりを聞いていたはずの岩田さんたちは、月曜日になってもそのことに触れてこなかった。噂好きな彼女たちなら、興味津々で質問攻めにしてきそうなのに。
「ほかの奴らにも、陽太が言ったんだ。俺はいいけど、あいつが言われたら嫌だろうから、誰にも言うなって」
その様子が、目に浮かぶように想像できた。
「そっか……変わってないな、陽太は」
1年前も、それより前も。今も、全然変わってなかった。
私が誰かに何かを言われたり、いじめられたりするたび、陽太が怒ってやり返してくれた。年上でも、体が大きい相手でもお構いなく。そんなことを繰り返しているうちに、だんだん私に対するいじめはなくなっていった。
思い出が蘇ってきて、胸が熱くなる。
放課後。教室を出て帰ろうとしたとき、
「葉山!」
呼び止められて、足を止めた。
振り向いて驚く。そこにいたのは、守屋くんだった。
「……何?」
また何か変なことを言われるんじゃないかと、つい警戒してしまう。
「あのさ、ちょっといい?」
「うん……」
守屋くんはお調子者キャラだけど、サッカーが上手で陽太と並ぶ人気者だ。女子の視線をちらほら感じる。廊下で話すのは避けたほうがよさそうだ。
校舎を出て、人気のない場所を歩く。守屋くんは無言で、私の前をずんずん歩いて行く。
どこまで行くんだろう……と心配になっていると、
守屋くんが体ごと振り向いた。そしていきなり、ガバッと頭を下げた。
「この前は、ごめん!」
突然のことについていけず、私はポカンとする。
「え……?」
「みんなの前でいきなりああんなこと言って……葉山の気持ち、考えてなかった」
守屋くんは頭を下げたまま言う。
「あのあと……カラオケ出てから、陽太に怒られた。人の気持ち考えろ、誰にでも知られたくないことくらいあるって」
「え、陽太が……?」
びっくりした。私が帰ったあと、そんなことになっていたなんて。
「うん。めちゃくちゃ怒ってた。なんでそんな怒るのかわかんなかったけど……めったに怒ることないあいつがあんなに感情むき出しにするなんて、俺、相当まずいことしたんだってことは、わかった。だから、何も言わないままだと気が済まなくて。ごめん、本当に」
「い、いいよ、そのことは。私ももう、気にしてないし……」
そういえばーーどうして気づかなかったんだろう。あの場にいて、やりとりを聞いていたはずの岩田さんたちは、月曜日になってもそのことに触れてこなかった。噂好きな彼女たちなら、興味津々で質問攻めにしてきそうなのに。
「ほかの奴らにも、陽太が言ったんだ。俺はいいけど、あいつが言われたら嫌だろうから、誰にも言うなって」
その様子が、目に浮かぶように想像できた。
「そっか……変わってないな、陽太は」
1年前も、それより前も。今も、全然変わってなかった。
私が誰かに何かを言われたり、いじめられたりするたび、陽太が怒ってやり返してくれた。年上でも、体が大きい相手でもお構いなく。そんなことを繰り返しているうちに、だんだん私に対するいじめはなくなっていった。
思い出が蘇ってきて、胸が熱くなる。