◯
「次、葉山さん」
呼ばれた瞬間、どくんと心臓が跳ね上がる。
「は、はいっ」
授業が始まってからずっと、アマリリス、アマリリス、と心の中で唱えている。おまじないというより呪文みたいに。だけど全然、緊張はなくならなかった。
「お、お願い、します」
ピアノの前に立つ。みんなが見ている。赤坂先生も見ている。視線に挟み撃ちされたみたいで心拍数がこれ以上ないくらいにあがっていく。
『おしゃべりしながら歌うところを想像するといいらしいよ』
よく考えたらわけがわからないし、この状況でそんな高度な想像ムリ……!
「葉山さん?」
赤坂先生の焦ったそうな声を聞きながら、
ーーおしゃべりおしゃべりおしゃべり。
と念仏のように唱えた。
そのとき、ふと、いつかの光景を思い出した。
『この歌詞すげえ好き』
『私も!』
『歌詞意味不明だけど』
『そこがいいんだよ』
昼間の屋上。水色に澄んだ空。陽太とおしゃべりしながら歌っていた。そこには緊張感なんてかからもなかった。
歌い終わって、小さな息をついた。
「ありがとうございました……っ」
赤坂先生が、目を見開いて私を見ている。
変だったかな。ものすごい間違いをしたとか……。
クラスメートたちの顔を見る勇気はなかった。でもとりあえず終わった、と胸を下す。
赤坂先生は「はい」とだけ言ってピアノに向き直り、次の人の名前を呼んだ。
「次、葉山さん」
呼ばれた瞬間、どくんと心臓が跳ね上がる。
「は、はいっ」
授業が始まってからずっと、アマリリス、アマリリス、と心の中で唱えている。おまじないというより呪文みたいに。だけど全然、緊張はなくならなかった。
「お、お願い、します」
ピアノの前に立つ。みんなが見ている。赤坂先生も見ている。視線に挟み撃ちされたみたいで心拍数がこれ以上ないくらいにあがっていく。
『おしゃべりしながら歌うところを想像するといいらしいよ』
よく考えたらわけがわからないし、この状況でそんな高度な想像ムリ……!
「葉山さん?」
赤坂先生の焦ったそうな声を聞きながら、
ーーおしゃべりおしゃべりおしゃべり。
と念仏のように唱えた。
そのとき、ふと、いつかの光景を思い出した。
『この歌詞すげえ好き』
『私も!』
『歌詞意味不明だけど』
『そこがいいんだよ』
昼間の屋上。水色に澄んだ空。陽太とおしゃべりしながら歌っていた。そこには緊張感なんてかからもなかった。
歌い終わって、小さな息をついた。
「ありがとうございました……っ」
赤坂先生が、目を見開いて私を見ている。
変だったかな。ものすごい間違いをしたとか……。
クラスメートたちの顔を見る勇気はなかった。でもとりあえず終わった、と胸を下す。
赤坂先生は「はい」とだけ言ってピアノに向き直り、次の人の名前を呼んだ。