「もう嫌……」
ここ2、3日、ずっと雨が続いている。空はいつもどんよりと暗く、私の気分も塞いでいく。だけど憂鬱なのは、天気のせいだけじゃない。
教室に向かいながら、隣を歩いている美咲が呆れ顔をする。
「そんなに構えなくても。テストは明日だよ?今からそんなに緊張しててどうするの」
「そうだけど……嫌なものは嫌なんだもん」
明日は音楽の授業で、歌のテストがある。クラス全員の前で、ひとりひとり歌を歌うのだ。
「まあ、嫌なのはわかるけどさ。1番だけだし、一瞬だよ一瞬」
歌が上手な美咲は、簡単そうに言う。そりゃあ、カラオケで熱唱できるような人には、なんてことないかもしれないけれど、私には大アリなのだ。
「歌詞間違えたり、詰まったり、音外したり、声裏返ったりするかも……」
不安要素をあげればいくらでもでてくる。
「だいたいいまどき、みんなの前で1人ずつ歌わせるテストなんてやる?やっぱりあの先生が鬼だよ……」
「まあ、赤坂先生が鬼教師だってことは否定しないけど。この前のコンクールも準優勝で終わって、一段と指導が厳しくなったし」
美咲は日頃の努力を買われ、赤坂先生から時期部長に打診されているらしい。プレッシャーがすごそうだ。
美咲の言う通り、自分でも緊張しすぎだと思う。そもそも誰も私の歌なんて興味ないだろうし……そう思っても、緊張はどうしても拭えないのだ。