◯
午前の部が終わり、私はホールの外に出た。演奏はどこの高校も迫力があって引き込まれるものばかりだった。もっと聴いていたい気もしたけれど、慣れない場所の雰囲気に圧倒されて、少し疲れてしまった。晴れた昼の空気は気持ちよかった。
「光里!」
出入りの忙しない入口で、名前を呼ばれた。
振り向くと、美咲が人混みをくぐって顔を覗かせた。
「抜けてきて大丈夫なの?」
「うん。これからお昼だけど、少しなら」
美咲は本番をやり遂げた開放感からか、落ち着いた様子で笑った。
「来てくれてありがとう。ちゃんと見えたよ」
「すごかった。たくさんの音がひとつになるってこういう感じなんだって、こういう場所で生で聴いて、初めて思った」
「よかった。嬉しい。あまりに人が多くて、始まる前まですごく不安だったの。でも全部出しきれた」
意外だった。いつもやる気にあふれている美里でも、そんなに不安になったりするんだ。どれだけ努力しても、上達しても、いざというとき不安になるのはみんな同じなのかもしれない。
「美咲」
私は思いきって言った。
「話したいことがあるんだけど、聞いてくれる?」
大事な友達だから、もう嘘をつかないと決めた。
もちろん、と美咲がニッコリ笑ってうなずいた。
「その話を聞きに来たんだから」
午前の部が終わり、私はホールの外に出た。演奏はどこの高校も迫力があって引き込まれるものばかりだった。もっと聴いていたい気もしたけれど、慣れない場所の雰囲気に圧倒されて、少し疲れてしまった。晴れた昼の空気は気持ちよかった。
「光里!」
出入りの忙しない入口で、名前を呼ばれた。
振り向くと、美咲が人混みをくぐって顔を覗かせた。
「抜けてきて大丈夫なの?」
「うん。これからお昼だけど、少しなら」
美咲は本番をやり遂げた開放感からか、落ち着いた様子で笑った。
「来てくれてありがとう。ちゃんと見えたよ」
「すごかった。たくさんの音がひとつになるってこういう感じなんだって、こういう場所で生で聴いて、初めて思った」
「よかった。嬉しい。あまりに人が多くて、始まる前まですごく不安だったの。でも全部出しきれた」
意外だった。いつもやる気にあふれている美里でも、そんなに不安になったりするんだ。どれだけ努力しても、上達しても、いざというとき不安になるのはみんな同じなのかもしれない。
「美咲」
私は思いきって言った。
「話したいことがあるんだけど、聞いてくれる?」
大事な友達だから、もう嘘をつかないと決めた。
もちろん、と美咲がニッコリ笑ってうなずいた。
「その話を聞きに来たんだから」