市民ホール前でバスを降りると、開始1時間前なのにすでに人がたくさん集まっていた。大きなカメラを持っている人が何人もいて、もしかしてテレビで中継されたりするのかも、と私まで緊張してくる。
人混みの中に、美咲の姿を探すけれど、美咲どころか、同じ制服の人すら見つけられない。
……いないか。今頃、控室かどこかで練習してるのかな。
ホールに入る前にトイレに向かおうとしたとき、狭い廊下の途中で、思わず足が止まった。
そこに、思いもよらない人がいたから。
ーー赤坂先生。
極端に短くしたショートヘア、ビシッと決めたスーツから、凛とした印象を感じる。でも、どこかいつもと様子が違っていた。壁際に立ち、うつむいて、何か小声でつぶやいている。
どうしたんだろう?
声をかけようか、気づかないふりして通り過ぎようか迷っていると、赤坂先生が、ハッと顔をあげて私を見た。長い睫毛を上下させて、目を瞬かせる。
「あ、あの」
「……葉山さん。こんにちは」
と先生はいつものポーカーフェイスに戻って挨拶をした。私もおずおずと、こんにちは、と返す。
「来てくれたのね。ありがとう。藤田さん頑張ってたから、応援してあげて」
先生はそう言うと、会場のほうに歩いて行った。
私はポカンとしてその背中を見送る。
やっぱり、明らかにいつもの先生とは雰囲気が違った。学校じゃないから?それとも、本番前で緊張していたとか?
……まさか、あの赤坂先生に限って、それはないか。
人混みの中に、美咲の姿を探すけれど、美咲どころか、同じ制服の人すら見つけられない。
……いないか。今頃、控室かどこかで練習してるのかな。
ホールに入る前にトイレに向かおうとしたとき、狭い廊下の途中で、思わず足が止まった。
そこに、思いもよらない人がいたから。
ーー赤坂先生。
極端に短くしたショートヘア、ビシッと決めたスーツから、凛とした印象を感じる。でも、どこかいつもと様子が違っていた。壁際に立ち、うつむいて、何か小声でつぶやいている。
どうしたんだろう?
声をかけようか、気づかないふりして通り過ぎようか迷っていると、赤坂先生が、ハッと顔をあげて私を見た。長い睫毛を上下させて、目を瞬かせる。
「あ、あの」
「……葉山さん。こんにちは」
と先生はいつものポーカーフェイスに戻って挨拶をした。私もおずおずと、こんにちは、と返す。
「来てくれたのね。ありがとう。藤田さん頑張ってたから、応援してあげて」
先生はそう言うと、会場のほうに歩いて行った。
私はポカンとしてその背中を見送る。
やっぱり、明らかにいつもの先生とは雰囲気が違った。学校じゃないから?それとも、本番前で緊張していたとか?
……まさか、あの赤坂先生に限って、それはないか。