ーーそして、卒業式の日。

『光里、なんで避けるんだよ?』

陽太に呼び止められた。

『避けてないよ』

『避けてるだろ。なにかあったのか?』

少し怒っているみたいだった。

『……ないよ。なにも』

『じゃあなんなんだよ。理由もわからないのにそんな態度とられると、いい加減腹立つんだけど』

『ほっといてよ』

『できるかよ、そんなの』

『じゃあ言うよ』

私は振り向いて言った。

『陽太といるのが辛い。ロクなことがない。もう話したくない!』

陽太は目を見開き、眉を寄せた。そして、

『わかった』

と言った。

それから陽太は本当やな何も話しかけてこなかったし、何も訊いてこなかった。
話したくないと言ったくせに、もう話せないことが寂しくて仕方なかった。
何があっても離れるわけがないと思っていた。
でも、そんなのは私の幻想だった。
特別なんかじゃなかった。
ただ家が近かっただけ。
小さい頃からよく遊んでいただけ。
幼なじみなんて関係は、こんなにもあっけなく、壊れてしまうんだ。