絶望的な気分で地面にうずくまる。
そのときーーサク、サク、と、足音が聞こえた。
『助けて!助けてください!』
私は必死に叫んだ。足音が止まった。そして、扉をガシャガシャ動かす音。
『ん?鍵が閉まってるのか?』
聞き覚えのある声。たまに挨拶をする、人のいい用務員のおじさんだった。
『ちょっと待ってなさい、鍵を取ってくるから』
おじさんは慌てて言って、しばらくして戻ってきた。
『こりゃあずいぶん古いな……探し物でもあったのか?はっ、もしかしていじめか?そうなのか?』
あたふたするおじさんに、いえ、と私は首を振った。
『違います。探し物をしてたら、気づかずに閉められちゃったんです』
苦しい嘘だった。嘘だと気づくだろうか。そんなはずはないと言って、学校に伝えるだろうか。気づいてほしいのか、ほしくないのか、わからない。
用務員のおじさんは、私の下手な嘘を信じたようだった。そのことに、私はどこかホッとした。
弥富はるかは先生にも気に入られているから、うまく言い逃れるに決まってる。卒業前に問題を起こしたくないのは、先生も同じだろう。それに、証拠もない。私はどこにも傷を負っていないし、見ていたのがあの子たちだけなら、正直に言うはずなんてない。
泣いていた弥富はるかの声が蘇る。
『はるか、かわいそう』
あの子たちにとって、悪者は、私だから。
あんなことをされたのも、私が卑怯だったから。
あとすこしだけ耐えれば。卒業までの間、何事もなく過ごせば、彼女たちと離れられる。
もう、あんな思い、したくない。
その日から、私は陽太を避けるようになった。
人の目が怖かった。
陽太の姿を見ると、反射的に逃げてしまうようになった。
『あんたと陽太じゃ、釣り合わないって』
あの日投げられた乱暴な言葉の数々に、押し潰されそうだった。
陽太にとって、私はただの幼なじみ。
ただ近くにいて、私がぼんやりしていて放っておけなかったから、今まで一緒にいてくれただけ。
そのときーーサク、サク、と、足音が聞こえた。
『助けて!助けてください!』
私は必死に叫んだ。足音が止まった。そして、扉をガシャガシャ動かす音。
『ん?鍵が閉まってるのか?』
聞き覚えのある声。たまに挨拶をする、人のいい用務員のおじさんだった。
『ちょっと待ってなさい、鍵を取ってくるから』
おじさんは慌てて言って、しばらくして戻ってきた。
『こりゃあずいぶん古いな……探し物でもあったのか?はっ、もしかしていじめか?そうなのか?』
あたふたするおじさんに、いえ、と私は首を振った。
『違います。探し物をしてたら、気づかずに閉められちゃったんです』
苦しい嘘だった。嘘だと気づくだろうか。そんなはずはないと言って、学校に伝えるだろうか。気づいてほしいのか、ほしくないのか、わからない。
用務員のおじさんは、私の下手な嘘を信じたようだった。そのことに、私はどこかホッとした。
弥富はるかは先生にも気に入られているから、うまく言い逃れるに決まってる。卒業前に問題を起こしたくないのは、先生も同じだろう。それに、証拠もない。私はどこにも傷を負っていないし、見ていたのがあの子たちだけなら、正直に言うはずなんてない。
泣いていた弥富はるかの声が蘇る。
『はるか、かわいそう』
あの子たちにとって、悪者は、私だから。
あんなことをされたのも、私が卑怯だったから。
あとすこしだけ耐えれば。卒業までの間、何事もなく過ごせば、彼女たちと離れられる。
もう、あんな思い、したくない。
その日から、私は陽太を避けるようになった。
人の目が怖かった。
陽太の姿を見ると、反射的に逃げてしまうようになった。
『あんたと陽太じゃ、釣り合わないって』
あの日投げられた乱暴な言葉の数々に、押し潰されそうだった。
陽太にとって、私はただの幼なじみ。
ただ近くにいて、私がぼんやりしていて放っておけなかったから、今まで一緒にいてくれただけ。