卒業前の、告白ラッシュのような盛り上がりムードも、私の臆病な気持ちを後押しした。
友達が陽太を呼び出してくれるというから、放課後、私は緊張しながら人気のない中庭に向かった。場所なんてほかにいくらでもあるのに、どうしてそんな人気のない場所なのか、ということを考える余裕もなく。
そこにいたのは、陽太はなかった。
弥富はるかーーまともに話したことは一度もない、クラスのリーダー的存在の女の子。それと、いつも彼女と一緒にいる取り巻きの女子たち。その中には、陽太を呼び出すと言った、友達も顔もあった。
信じられない気持ちで見ると、彼女は気まずそうに目を伏せた。
そのとき、ようやく気づいた。
ああーー私は、乗せられたんだ。
『陽太じゃなくてゴメンねー』
弥富はるかは笑って言った。
『あんたが陽太に告ろうとしてるって聞いたから、教えてあげようと思って』
『なにを……?』
『あんたと紘太じゃ、釣り合わないってこと』

ーー釣り合わない。

胸に突き刺さる、言葉。
そんなの、わざわざ言われなくても、前からわかってる。
陽太は人気者だから。私と仲良くしたがる子は、私を通して陽太と仲良くしたがっているってことくらい、知っていた。陽太の幼なじみということのほかに、私に価値なんてないってこと。
わかってて、陽太のそばにい続けた。ほかの子よりも自分が陽太の近くにいることに、優越感を感じていた。
最低だ。そんなずるい自分が嫌だった。
でも、だからって、なんでこんな集団で、わざわざ言われなきゃいらけないんだろう。
『だからさ、ちょっと怖い思いでもしないとわかんないかなって』
『な、なに……』
目の前の女子たちの顔が、みんな、黒い画面に見えた。三日月型の目と口だけが、不気味に光っていた。
私は両手を掴まれ、ゴミ袋をゴミ置き場に放るみたいに、乱暴に近くの倉庫に入れられた。一目で使われていないとわかる使われていない小さな倉庫。鼻を突く埃と土の混ざった匂い。元はクリーム色だったことが辛うじてわかるほど錆び付いた扉は、動かすたびに不快な音を軋ませた。そして、私1人を残して、扉が閉められた。抵抗する間もなかった。