夜10時。
「おはよう、光里」
「うん。おはよう」
夜の「おはよう」にもだんだん慣れてきて、最近はごく普通に私もそう返すようになった。考えてみると聖と話すのはこれが今日初めてなのだから、間違ってはいないのかも。でも、やっぱり違和感はあるけれど。
「なにか嫌なことがあった?」
「なんでわかるの?」
私はびっくりして訊いた。
「うーん、勘かな」
挨拶だけでそんなことがわかるなんて、勘というには鋭すぎだ。でも聖は、たまにびっくりすることを言うから、私もだんだん慣れてきていた。
「話したくなかったら話さなくていい。でも、誰かに話したほうが、楽になるときもあるよ」
「……うん」
聖の声は、風邪のときに飲む子ども用の甘い薬みたいだった。その優しさに思わず縋り付きたくなる。
私は、壁に向かって話した。
中学のときのこと。陽太のこと。弥富はるかのことーー
心の奥に溜まっていたものを両手で押し上げるようにして、全部吐き出した。
「おはよう、光里」
「うん。おはよう」
夜の「おはよう」にもだんだん慣れてきて、最近はごく普通に私もそう返すようになった。考えてみると聖と話すのはこれが今日初めてなのだから、間違ってはいないのかも。でも、やっぱり違和感はあるけれど。
「なにか嫌なことがあった?」
「なんでわかるの?」
私はびっくりして訊いた。
「うーん、勘かな」
挨拶だけでそんなことがわかるなんて、勘というには鋭すぎだ。でも聖は、たまにびっくりすることを言うから、私もだんだん慣れてきていた。
「話したくなかったら話さなくていい。でも、誰かに話したほうが、楽になるときもあるよ」
「……うん」
聖の声は、風邪のときに飲む子ども用の甘い薬みたいだった。その優しさに思わず縋り付きたくなる。
私は、壁に向かって話した。
中学のときのこと。陽太のこと。弥富はるかのことーー
心の奥に溜まっていたものを両手で押し上げるようにして、全部吐き出した。