駅の周辺はいつも通り賑やかだ。ファミレス、本屋、コンビニ、細々とした看板のあるビル。とくにこの辺りは再開発中で、古いものから新しいものへ、景色が目まぐるしく変わっていく。
ふと、あの店はまだあるだろうか、と思い出した。角を曲がった中道にあるCDショップ。古いものの代表格みたいなおんぼろの店で、人のいいおじさんがひとりでやっている。とにかく激安で、中学の頃、陽太と一緒によく通った。
なくなっていたら嫌だな、と思う。確かめに行きたいけれど……。
迷ったあげく、結局、曲がり角を通り過ぎてしまった。あの店にはいつも陽太と一緒に行っていたから、今はやっぱり、行ける気がしない。
煉瓦造りのビルから、1組のカップルが出てきた。あ、と思ったときには、もう遅かった。
腕を組んで、楽しげに笑い合うふたり。そのうちの1人と目が合った。ゆるいウエーブの髪、メイクで大人っぽい雰囲気になっているけれど、間違いない。

ーー弥富はるか。

彼女とは、中学3年のとき同じクラスだった。でも、私にとっては、ただのクラスメートなんかじゃない。
……どうして今日は、どこかに行くたび、会いたくない人に会うんだろう。