それからいろいろな話をした。私の好きな音楽の話や、聖の好きな映画の話。音楽と映画は違うけれど、共通点もある。歌自体を知らなくても映画の主題歌や挿入歌で聴いたことがあったり、映画を知らなくても使われている音楽だけは知っていたり。
「外国の古い映画が好きなんだ。自分の知らない、ずっと遠い場所を旅するような気分になれるから」
「ふわ……」
聖があくびをしはじめた。まるで正確な体内時計を持っているみたいに、今日も12時ぴったりだった。
「明日も話たいな」
と聖が言った。
「うん。いいよ」
私は迷わず答えていた。
「楽しみができた」
聖が眠そうな声で、でも嬉しそうに言った。

「おやすみ。また明日」
電気をつけたままベッドに入る。

ーーまた明日。

その言葉を、頭の中で繰り返す。
明日も、あるんだ。
そう思うと、真っ暗な空に月が昇るように、沈んでいた心がほんの少し、浮かびあがるような気がした。