その日は十文字くんの変身ぶりにざわついただけでは済まなかった。

九時を少し回った頃に部屋に入ってきた部長が、背の高いダンディな男性を伴っていたのだ。

ゆるくパーマがかかった髪は整えられていて、私の大好きなスリーピースを着こなしている。


「皆、聞いてくれ。深沢(ふかざわ)清彦(きよひこ)くんだ。商品開発部から異動になり、二課の課長補佐として勤務してもらう」


そういえば、そんな辞令がメールで来ていた。

ここ二課は、総勢十六名。
得意先の数が増えてきたため、新たに人が配属される予定もある。

私たちをまとめている課長の手が回らなくなったので、もうひとり投入されると聞いた。


「深沢です。二課はとても活気のある部署だと聞いています。頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」


深沢さんの言葉が終わると拍手が沸き起こる。

真由子の目がくぎ付けなのは、彼女のタイプだからだろう。
彼女は大人の雰囲気が漂う男性が好みなのだ。