営業車の運転は十文字くんに任せてある。

というのも、私は車庫入れが大の苦手で、縦列駐車なんてもってのほか。
まっすぐ前に進むだけならいいのだが、車線変更ですら本当は嫌なほどの運転下手だからだ。

一方、いつもボーッとしている印象の十文字くんは意外にも運転技術があり、助手席に乗っていても快適そのもの。

後輩だから任せるというような言い方はしてあるものの、正直言って私より運転がうまい。


最初に飛び込んだ店は、とある高校の目の前にある小さな商店。

パンやジュース、そしてお菓子、他には文房具などを販売している校内の売店のようなお店で、客は高校生ばかりだ。

帰りにちょっと寄って飲み物や食べ物を買う人がほとんどなので、午前中は客もあまりいない。


「こんにちは。エクラです」
「いらっしゃい」


店主は七十代の素敵な女性。髪こそ白髪交じりではあるが、いつも背筋が伸びていて笑顔を絶やさない。

五年ほど前に旦那さまに病気で先立たれてから、ひとりで店を切り盛りしているのだという。