正直言えば、ないほうが数倍いい。
でも、完璧男子なんて十文字くんじゃないのよ。


「なくても素敵。だけど、緊張するのはよくないし。ほら、もっと話せなくなると困るでしょ?」
「そうですよね!」


素直に信じる彼を前に、罪悪感でいっぱいになる。


「十文字くんの変身ぶりに、皆びっくりするよ」

「そうでしょうか。でも、僕……この髪形を自分で維持できる自信がありません」


たしかにプロの仕上げた髪形にはならないだろう。
それは私も経験済みだ。


「大丈夫。おかしかったら、朝、シュッとしてあげるから」


見た目からでもいいから自信をつけてほしい。

想像のはるか上をいくなかなかの変身ぶりなのだから、胸を張っていいと思う。
そのうちおのずと、おどおど感がなくなるはずだ。……と信じてる。

そのためにデートを企てたんだし。


「そうですよね。篠崎さんがいれば大丈夫ですよね、僕」