「わ、わかった」
私は視線を伏せ気味にして、手の感覚だけでネクタイを直した。
へっぴり腰は私かも。
会計を済ませたあと、満足げな彼と店を出て再び歩き始める。
「あとはどうしたらいいですか?」
「そうね……。靴は磨けばいいとして、メガネ、かな。視力相当悪いの?」
かなりのいい男になったものの、黒縁メガネが大きすぎてちょっと邪魔だ。
同じ黒縁でも、もう少しスタイリッシュな形があるだろうし、大丈夫ならコンタクトという手もある。
「視力は両方とも一・〇です」
「一・〇って、私よりいいじゃない。どうしてメガネをかけてるの?」
なにか他に不都合があるの? 乱視がひどいとか?
「メガネをかけていないと緊張するんです。見られるのが得意じゃなくて……。せめてガラスがあればと」
注目されるのが苦手なのはなんとなく知っているけど、まさかだてメガネだったとは。
驚いた私は、彼の目元をじっと見つめる。