「えぇっと、一本路地を入るみたい」


スマホの地図を片手に歩くが、私の目はチラチラ周囲に向いていた。

あの男の子がまた現れるのではないかと気が気でないのだ。

かといって、勝手に現れるもののけたちをどうにかできる手段なんて知らず、警戒するくらいのことしかできない。

もう無視は通用しないのかも。
現れたらとにかく逃げよう。
でも、十文字くんはどうしたら……。

そんなことで頭がいっぱいになりながら、黙々と歩く。


「篠崎さん、どうかしました?」
「ん?」
「顔が怖いです」
「あぁ、ごめん。ちょっと考えごとをしてただけだよ。十文字くんのせいじゃないからね」


一応断っておかないと気にしそうだ。


「大丈夫ですよ」
「なにが?」
「僕がいるので」


もしかして、もののけが見えてる? 
やっぱり意図的に助けてくれていたの?

唖然として彼を見上げると「篠崎さん、方向音痴ですよね」と私のスマホをのぞき込んだ。