そんなタイプがあるのかどうかはさておき、トイレで――しかも出先の――ぶつぶつ話しているなんて、痛い人だ。

しかし、あの銀髪の人のことを説明できないからにはそう言うしかなかった。

でも、男の声が混ざっていたことに気づかなかった? 


「うるさくなんてないですよ。見られたとかなんとかって聞こえただけで」


よかった。最後しか聞かれてないようだ。


「ちょっと昨日読んでた推理小説を思い出して口走っちゃって……。それより、髪、乾かしてもらって」


かなり無理やりな言い訳をした私は、なにか聞き返される前にと十文字くんを美容師のもとに返した。

再び先ほどの待合スペースに戻り十分。
髪をブローしてもらった十文字くんがやってきた。

あれっ、別人みたい。

サラサラの前髪をさりげなくかきあげた姿にドキッとするほどで、思わず見惚れてしまった。


これは想像以上かも。
真由子も腰を抜かすレベルだ。


「よく似合ってる」
「持ち上げるっていうやつですね?」
「違うよ。本当に似合ってる」