「もう、大丈夫だ」


ふくらはぎに目をやると、すっかり傷は消えている。

これを治すために来てくれたの? 
いや、どうして私がここにいるとわかったの? 
助かったけど、女子トイレはまずくない?


どうやら彼の唾液には、傷を治す効果があるらしい。

ますます彼が何者なのか気になる。


「右脚ばかり……。呪われてるんじゃないか?」


ん? 右脚〝ばかり〟って、私が昨日ひねったことを言ってる?
傷もないのにどうしてわかったの?

疑問だらけで目をぱちくりしていると彼は続ける。


「今日は花柄か」
「は?」


唐突にスカートについて言及されて首をひねる。


「俺はもっとセクシーなのが好みだ」


セクシー?


「あっ、えぇっ!」


花柄はスカートではなく、ショーツの柄のことだ!と気づいたときには、彼の姿は忽然と消えていた。


「嘘。見られた……」


脚を持ち上げられたのだから、見えてもおかしくない。