はぁ、と大きなため息をついて破れたストッキングを脱いだとき、背中に気配を感じて体を固くした。

また来た?


「いい加減にして!」


怒りと絶望が半分混ざった気持ちで声を絞り出すと、「落ち着け」という男の人の声が耳に届いた。

あれっ、この声聞いたことがあるような。


「どこをやられた。ここか」
「えっ? ちょっと……!」


私の脚に手をかけたのは、あの袴姿の銀髪の男だ。

女子トイレに入ってくるなんて、どういうこと? 
というか、どこから、いつ入ってきたの?

焦りまくる私とは対照的に当然というような顔をした彼は、なんと私のふくらはぎの傷に唇を押し付けてペロリと舐める。


「き、汚いから!」
「黙ってろ」


片脚を持ち上げられた状態では逃げるに逃げられず、不安定な体を支えるために壁に寄りかかったまま呆然と彼を見つめることしかできない。