彼はうなずいているが、かなり心配。
本当にお母さんになった気分だ。
お金があることを確認して、早速店内へ。
予約済みなのですぐに席に通された。
「それじゃ」
私は雑誌でも読んで待っていようと思い離れようとしたが、「待ってください」と心細い声が聞こえてきた。
「どうしたらいいんですか?」
「あー……」
美容師任せでもいいような気もするけれど、自分好みにしたいという邪な欲求が頭をかすめる。
「希望はないの?」
「はい、さっぱりわかりません」
わかっていたら、こんなボサボサ頭で平気なわけがないか。
「それじゃあ、私がオーダーしてもいい?」
「お願いします!」
そんなキラキラした目で見つめられると、邪心のある私はつらい。
「それじゃあ……。前髪はちょっと長めで、こう流せる感じに、うしろは――」
見本の雑誌を手にして、美容師に細かく指示を出す。
「とにかく、清潔感あふれる感じにしてください」