「そうね、あってる」
一気に気持ちが落ちて、少しきつい言い方になった。
しかし彼は「よかった」と安堵している。
教育係って、ストレスたまるかも。
「篠崎さんは別になにを着てもいつもかわいいのに、いちいち言うなんて、会話って難しいですね」
あれっ? 今、花丸の言葉を口にしなかった?
「どうかしましたか?」
唖然として彼を見つめていたからか、不思議そうな顔をされてしまった。
「な、なんでもない。それじゃあ行こうか」
なに? もしかして魔性の男?
いや、どう考えても駆け引きをしているとは思えない。
天然だよね、多分。
そんなことを考えながら向かった美容院は、大通りに面した一等地にあり、客の数も多い。
「ここ」
「え……」
駅地下の千二百円とかいう理髪店とはおそらくかなり印象が違うのだろう。
彼は店を前にして何度も瞬きを繰り返す。
「ごめん、千二百円では無理なの。カットで五千円くらいなんだけど……」
「え……」