きっちり着すぎなのだ。


「そうでしたか……」
「うん。寝癖は……。美容院に行こうか」


相変わらずうしろの髪がピヨンと跳ねているものの、会社みたいに寝癖直しスプレーの用意がない。


「よろしくお願いします。篠崎さん、か、かわいいですね」


顔を真っ赤にして私を褒める十文字くんが意外すぎる。


「そ、そう? ありがとう」


今日は白いカットソーにお気に入りの大きな花柄のスカートを合わせてきた。

会社ではもっと地味な服装をしているのでそう言ったのかもしれない。

トップスの白が被っているのに気づき、恋人同士が示し合わせたみたいだと焦る。
とはいえ、どうしようもない。


「これであってますか?」
「ん? なにが?」
「相手を持ち上げる会話です」


え……。

彼の発言に唖然とする。

そういえばスーパーまるはを訪問したあと、そんな話をしたような。

ということは、『かわいい』と褒めたのは、本心ではないということ? 
喜んだ私がバカみたいじゃない。