「あのね、これは提案なんだけど、髪形とか洋服とかちゃんとしてみない?」


モラハラにならないようにどう伝えたらいいのかと考えあぐねていたが、結局はストレートな言い方になった。

これではさっき『ネクスト黒 スタウトをご検討いただけないでしょうか?』といきなり切り込んだ彼と同じだ。

とはいえ、彼には遠回しな言い方では伝わらない。


「したいんですけど、どうしたらいいのか……」


そんな困った顔しないでよ。


「明日、よければ一緒に出かけない? 美容院も紹介するし」
「本当ですか?」


出かけたくないと拒否されるとばかり思っていたのに、彼の目が輝いたのが意外だった。


「うん。でもちょっとお金を使っちゃうかもしれないけど……」


美容院もスーツもだとそこそこかかる。

食事くらいはおごってもいいけれど、私も高給取りではないのでそこまでは面倒は見きれない。


「貯金はあるんです。どうやって使ったらいいかわからなくて」
「そ、そう?」


私はどうやったら貯まるかわからない。