営業としてはまだまだ足りないところだらけだが、成長がみられてよかった。


「うん。でもまだこれからよ。試飲していらないと言われたときの売り込み方も考えておかないと」
「そう、ですね……」


途端に眉尻を下げる彼の肩をポンと叩く。


「いちいちへこまないの! たとえ不採用になっても、また次にチャレンジすればいいでしょ。とにかく今は採用に全力を尽くす。OK?」
「はい」


小声で返事をした彼は、エンジンをかけた。



それから数店を回ったあと新規開拓に向かったが、担当者に会ってももらえなかった。


「ダメだったか……」


門前払いされた店を出て肩を落としていると、また嫌な空気に包まれる。

来た?

こうも立て続けにもののけに襲われるなんて、やっぱり昨日から気持ちが落ちているのかな。

今日はなに?と思っていると、目の前に絣模様の着物を着た小さな男の子が現れた。

昨日のカエルよりずいぶんマシだと思ったものの、見た目がグロテスクではないもののけのほうが意外と厄介なことも多い。