「今日はフォローアップと、新規一軒行くからね」
「大丈夫ですか?」


昨日の今日だから、彼なりに私を気遣ってくれているのかな。


「大丈夫。あんなことでへこんだりはしないから」


本当はかなりへこんでいる。
けれども、後輩の前で弱みを見せたくなかった。


「そう、ですか……」


「僕が先に行きます!」くらいの発言を期待したいところだが、十文字くんにそれは無理だろう。


私たちはそれからすぐに会社を飛び出した。

まずは数件の得意先に顔を出して、あいさつを済ませる。
特に用がなくてもこの作業は重要だ。

気にかけていますよという態度を示しておかないと、すぐに他社に持っていかれる。

店の棚には限りがあるので場所取り合戦が常に行われているのだ。


訪問して担当者にあいさつをしたあとは、実際に店内の棚に赴いて、時には陳列を直したりもする。

そのときに他社の商品の新規採用があったとか、棚落ちしたといったことも、もちろんチェック。