「大丈夫か?」


振り向き、座り込んでいる私のところまで歩み寄った彼の襟元は乱れ気味で、たくましい体躯を想像させる大胸筋が見え隠れしている。


「ありがとうございました」
「いや。お前が無事ならそれでいい」


彼は優しい笑みを浮かべた。

あれっ、どこかで見たことがあるような……。

なんとなく十文字くんと口元が似ている気がする。

しかし、十文字くんにこんなことができるはずもなく、髪の色も違えば、彼には十文字くんにはない目力がある。
やはり別人だ。

私に手を伸ばしてきた彼は、絞められた首にそっと触れ、眉をひそめる。


「こんな白い肌に傷をつけるとは……」
「えっ……。あっ」


唐突に私の肩を自分のほうに引き寄せた彼が首筋に唇を押しつけてくるので、目が点になる。
それに加えてペロッと舐められ、完全に思考が停止した。

今度は違う意味で酸素が肺に入ってこない。