ぐいぐい絞め上げられはじめて、必死に手で舌を外そうとするもびくともしない。

私、このまま死ぬの? 
なんで?

絶望で涙がこぼれそうになった瞬間、空から人が降ってきて、カエルをひと蹴りで蹴散らした。

助かっ、た……。


絞められた首を押さえ、深呼吸して酸素を貪る。
空気がこんなにおいしいものだと初めて知った。


「ふざけんな!」


情けなく転がるカエルに向かって低い声でけん制したその人は、サラサラの銀髪をなびかせ、古代紫の長着に漆黒の馬乗り袴をはいている。

さらには黒地に金糸で刺繍が施されたひざ下まである長い羽織を纏っていた。


「あやめに手を出すとは、いい度胸だ」


初対面のはずなのに、どうして私の名前を知っているの? 
しかも、どこから飛び降りてきたの? 

近くにそれらしき建物はない。

すごんだ彼が足を踏み出すと、カエルはあっさり消え去った。