「もう、あやめが改造しちゃえばいいじゃん。それで営業先からも評判がよくなって実績が上がれば御の字でしょ?」
「まあ、そうね」
営業力以外の魅力で契約をもぎ取るなんて邪道な気もするが、誰だって好感が持てる人から商品を買いたいもの。
無論、こちらから女を武器にして契約をもぎ取るようなことはしないし、あの店長のような人は断固お断りだけど、クライアントによく思われるのは大切なことだ。
「改造か……」
ちょっと興味あるかも。
あのボサボサ頭をすっきりさせて、スーツもサイズをきちんと合わせ、メガネをコンタクトにするとか?
どんなふうに変身するのか見てみたい。
「ちやほやされるくらいのほうが、自信がつくかな。今は覇気がなさすぎるし、おどおどしてるのよね」
「うんうん。いつも小声だし、ちょっと反論されるとすぐに意見を引いちゃうし。自信がないのかもよ?」
私だってそれほど自信があるわけではないが、彼はなさすぎる。
「やってみるか……」
「うん。助けてもらったお礼もかねて、デート行っておいで」
「デートじゃないからね!」
私は真由子にくぎを刺しながら、十文字くんが変身したあとの姿を勝手に想像し始めた。