営業なのだから、もう少し身だしなみに気を使ってもらいたいところだ。

身長は百八十センチくらいあるし、細身だし……我が二課の中でも一、二を争うスタイルのよさ。

しかし、そうは見えないのが十文字くんの残念なところ。

ちょーっとサイズが大きすぎるスーツに、どう見ても磨かれていない革靴。
ネクタイのセンスもいまいちだし、フレームの大きな黒縁メガネもまったく似合っていない。


「この髪形が、まずダメなんじゃない?」


別に汚れているわけではないけれど、はっきり言って清潔感はない。
いつもはねているし、ボサボサという言葉がぴったりなのだ。

ちゃんと整えればいいのに……。

つい本音をこぼしてしまったが、これってモラハラかしら?


「すみません。よくわからなくて」
「謝らなくてもいいけど……。とりあえず仕事」
「はい」


もう九時五分。
特に始業のチャイムが鳴るわけではないので、皆仕事を始めている。