「病院って? 十文字くん、どこか悪いの?」
私たちの会話を聞いていた真由子が尋ねてくる。
「ちょっとね。ねぇ、飲みに行かない?」
「いいよ。もう終わるから待ってて」
串さとのことや、十文字くんのことを相談したくて真由子を誘った私は、仕事に一区切りつけてパソコンの電源を落とした。
真由子と行く店はいつも決まっている。
どちらの担当でもなく、エールビールを常温で出してくれる珍しい店だ。
「今日はラガーにするから、潤生(じゅんなま)」
潤生はエクラで最も売り上げがあるラガーのピルスナー。
「あやめがエール飲まないなんて珍しい。それじゃ私も潤生」
ジョッキでもらって乾杯だ。
カチンとグラスを合わせたあと、グビグビ喉に送る。
一気に半分くらい飲み進んだあとテーブルに置いた。
「プハーッ。仕事のあとのビール、最高」
「あやめ、おっさん化してるけど大丈夫?」
真由子は涼しい顔で上品に枝豆をつまんでいる。