「ハラハラさせんな」
「ごめんなさい……」


素直に謝ったはいいが、本当に十文字くん、だよね? 
どうしたの?

いつもと違いすぎる様子に、これは夢ではないかと疑うほどだ。


とはいえ襲われそうになり震えが止まらない私は、彼のジャケットをギュッとつかんでしがみついていた。


「あやめ」


とびきり優しい声で名前を呼ばれて、鼓動が勢いを増していく。


「お前に触れていいのは俺だけなんだよ」


どういう、意味?

十文字くんらしからぬ男らしいセリフに、鼓動がどこまでも速まっていく。

彼は私の背中に回していた腕の力を抜いたかと思うと、熱を孕んだ眼差しで私を凝視してくる。

な、なに?


「あやめ」


もう一度私の名前を口にしながら顎に手をかけられて、息をするのも忘れそうになる。

これって……。まさか、キス?

彼の顔が近づいてくるのがわかったが、怒涛の展開に頭が真っ白になってしまいどうしたらいいのかわからない。