間抜けな声が出たのは私だ。
それって、中島さんのこと?
「手を出された客の女がお前の結婚を知り、SNSで関係を暴露した。で、非難の嵐。女が関係を決定づける写真まで公開したから、ここ一週間は客入りも激減。店の信用はがた落ちで、二号店なんて夢のまた夢」
強い口調で言い放つ十文字くんは、中島さんの腕をさらに締め上げる。
「痛っ……」
「痛いのは、お前にだまされた女の心のほうだ。お前に、あやめに触れる資格なんてねぇんだよ!」
中島さんの顔がゆがむ。
ほんと、誰?
見た目はいつもの十文字くんだけど、啖呵を切っている姿はとんでもなく男前で、不覚にも胸が疼く。
「あぁっー! お、折れる」
「十文字くん、ストップ!」
このままでは本当に腕の骨を折りかねないと感じたので、慌てて間に入って制した。
「チッ。あやめ、行くぞ」
「は、はいっ」
あの十文字くんが私のことを『あやめ』って呼び捨てしてる……。