腕をグイッとつかまれて畳に押し倒されたので、思いきり胸を押して拒否をする。


「なんだよ。強情だな」
「ちょっ、嫌!」


叫んだ瞬間、障子が開いた。


「お前、なにしてんだ」


怒りの形相の十文字くんが、中島さんの首根っこをつかんで私から引き離す。

助かった?


「汚い手で彼女に触れるな」


中島さんの腕をいとも簡単にひねりあげているのは、どう見ても十文字くんだけど、誰?と言いたくなる。


いつも自信なさげにおどおどしている彼の姿はなりを潜め、黒縁メガネの奥の目は眼光鋭く中島さんをにらみつけているのだ。


「離せ。契約が欲しいんだろ?」
「潰れゆく店の契約に、彼女を差し出せと?」


潰れゆくって……。
こんなに繁盛しているのに?

唖然としていると十文字くんは続ける。


「従業員のひとりを妊娠させて結婚の予定あり。しかし、客にも手をつけていてトラブルになっている女たらし」
「は?」