私も足を踏み入れると障子を閉められてしまい驚いたが、商談なので密室を好むのかもしれない。

ただ、他の従業員は見当たらず、まだ出勤前のようだけど……。


「それで、サワーだっけ?」


テーブルを挟んで座るかと思いきや、中島さんは私を促した隣に腰を下ろす。


「はい。居酒屋さんに卸しておりますサワーは、こちらのパンフレットにございますように――」


私はパンフレットをテーブルに出して説明を始めた。

最初こそ熱心に耳を傾けてくれている感じだった彼が、なぜか私たちの間にあった隙間を詰めてくるので、嫌な予感がする。


「一番人気はこちらのレモンでして」
「篠崎さん、彼氏は?」
「いないんですよ。モテなくて。あはは」


関係ないことを言いだされて、苦笑いしながら体を固くする。


「かわいいのに、もったいないね。俺と付き合わない? そうしたらうちの店のサワー、全部お宅に変えてもいいよ?」