「店長は、中島(なかしま)さん三十四歳。最近二号店を出すっていう噂もあるんだよね」


調べてあるデータを見ながら、運転している十文字くんに話しかける。
知っておいてもらいたいからだ。


「正社員は五人。あとはバイトね。……名物の串揚げは牛脂百パーセントの油で揚げていて、衣にも味の秘密が隠されているんだって。おまかせ串揚げセットとご飯、サラダ、デザートに飲み放題をつけて三千五百円。お値打ちよね」


こうした情報は相手と話を弾ませるのに重要だ。
まったく知らずに乗り込んでいっても、会話が続かない。


「調べたのはそれだけですか?」
「ん? あとは、納入されているビールは――」


十文字くんが珍しく食いついてきたので、肝心の酒類の話も付け加えた。


串さとの前に到着しても、彼は浮かない顔をしている。
と思ったが、いつもこんな顔をしているか。


「ネクタイ曲がってる」
「すみません」