絶望で顔がゆがんだとき、十文字くんに肩を抱かれて驚いた。
「お前、誰に見惚れてるんだよ」
あれっ、神様のほう?
「見惚れてなんかないわよ」
「安心しろ。俺がいるだろ」
耳元で色情たっぷりにささやかれては、腰が砕けそうになる。
〝純粋無垢〟という言葉がぴったりな十文字くんが口にする言葉じゃないもの。
「お前、なかなかかわいいな。このくらいのことで真っ赤になって」
「違っ……」
違わないけど、指摘しないで。
「それで、高天原に帰ってもいいって?」
もののけの存在を感じたばかりなのに、とんでもなく意地悪な質問が飛んできた。
なにも言い返せないでいると、彼は続ける。
「そうやって強がるあやめもかわいいけど、素直なお前も好きだぞ」
余裕の笑みで『好き』とか、ホイホイ口にしないでほしい。
心臓が止まりそうになるでしょ?



