十文字くんは、ケガをした日から一週間後に仕事に復帰した。
寝癖がついたままだったものの、まずは課長にあいさつに行かせると、申し訳なさそうに頭を下げている。
「十文字、大変だったんだって?」
「すみません。下痢が止まらなくて」
女性社員がいっぱいのフロアで、下痢がどうとか、大きな声で話すものじゃないとあとで教えてあげよう。
デスクに戻ってきた十文字くんのネクタイに手を伸ばし、きちんと締め直す。
「はい、うしろ」
朝の身だしなみチェックはもう流れ作業になっていて、慣れたものだ。
寝癖直しスプレーをひと吹きしてからくしで整えた。
「できあがり」
「ありがとうございます、篠崎さん」
「ふふふ。やっぱりこれを見ないとエンジンかからないわ」
真由子が私たちを見て肩を震わせている。
「真由子がやってもいいのよ?」
「お母さんはひとりでいいでしょ?」
「お母さんじゃないし」



