いつも彼の身なりを整えるのが仕事の私には、これくらいなんでもないはずなのに、数センチまで迫った彼の唇を思い出して意識してしまい、体がカーッと火照りだす。
ダメだ。恥ずかしすぎる。
「篠崎さん、どうしました?」
「ううん。さっきはすごくかっこよかったのに、ご飯粒なんてつけてと思っ……あっ」
私、なにをカミングアウトしているの?
動揺しすぎだ。
「さっき?」
「あぁっ、前に見たドラマに似たシーンがあって思い出しただけ。食べよ」
どう考えても不自然な話のそらし方だったのに「そうだったんですか」と納得している十文字くんに噴き出しそうになる。
「篠崎さんもついてたら、僕が取ってあげますね」
「つけないし」
やっぱり彼は純粋すぎるほど純粋な、優しい人だった。



