「俺が高天原に帰ったほうが幸せだとか、勝手に決めんな」
彼がそう口にしたとき、心の中が全部見透かされていることを悟った。
どうやら隠しごとなんてできないらしい。
「好きな女くらい、守らせろ」
今、なんて言ったの?
ハッとして少し離れると、熱い視線が絡まる。
こんなに真剣で色気漂う表情をした十文字くんなんて知らない。
「あやめ」
彼は私の名前をもう一度口にしたあと、右手を私の顎にかけて持ち上げる。
待って、これって……。
「俺の嫁になれよ」
嫁!?
唖然としている間に、彼の端整な顔が近づいてきた。
キス、される……?
「ちょっと待った!」
唇が重なるまであと数センチ。
我に返った私は、彼がケガをしていることも忘れて突き飛ばしてしまった。
「チッ」
よろけて不機嫌に舌打ちした彼は、大きく肩を落としている。
「ご、ご飯作るね」
私は絶対に真っ赤に染まっている頬を隠すためにすぐに背を向け、部屋を飛び出した。



