「俺……スサノオの末裔なんてたいそうな立場だから、どれだけ必死になって動こうが、もともと備わった能力のおかげだと言い捨てられた。だから余計な努力をするのはやめた」
ぐうたらしていたのにはそんなわけがあったのか。
それも切ない。
「こっちでも適当にもののけたちを蹴散らして高天原に帰ろうと思ってたのに、あやめと関わっているうちにどんどん居心地がよくなってきて」
彼はそこまで言うと私をくるっと回して向き合わせた。
そしてまっすぐな視線を送ってくる。
「できない俺のために残業までして知恵を絞ったり、わかるまで根気よく説明してくれたり。しかも、俺がほんの少し前進しただけで、自分のことのように喜ぶし。俺をわかろうとしてくれたヤツなんて、初めてだったんだよ」
「十文字くん……」
その瞬間、私は彼の広い胸の中にいた。
浴衣の襟元がはだけているせいで、頬が彼の素肌にじかに触れる。
しかし恥ずかしさより安心感が上回った。



