もちろんケガが心配なのには違いないけれど、それだけではない。
彼が甘えてくる姿も、しょげて肩を落とす姿もなくて、ぽっかり心に穴が開いたかのように寂しかった。
「早くよくなって。また寝癖を直してあげるから」
どうしたんだろう、私。さっきから泣きそうだ。
元気になったら高天原に帰ってしまうから?
私は布団から飛び出している右手を握った。
ずっと一緒にいられたらいいのに。
仕事をともにしていると、どうしようもないなぁとため息をつくことは多かったが、彼とすごしてきた時間はとてつもなく楽しかった。
「あやめ」
「十文字くん?」
かすかに名前を呼ぶ声が聞こえたので、彼の顔をのぞき込む。
するとゆっくりまぶたが開いた。
「よかっ……よかった……」
彼の前では泣くまいと思っていたのに、勝手に涙があふれてきて止まらない。
「なに泣いてるんだよ」
彼は右手を伸ばしてきて、私の頭をなだめるようにポンポン叩く。



