そうすればおのずとなにを言えばいいのかわかってくるような気もするけれど、難しいか。
「売りたい気持ちですか……。そんなの今までなかったな」
え……?
まさかの告白に開いた口がふさがらない。
「念のために聞くけど、営業ってなにする部署か知ってるよね……」
「はい。エクラの商品を広く知っていただくために活動する部署です。最初に課長がそう教えてくださいました」
知ってもらうだけなら、広報の仕事でしょう?
もしかしてすごく頭がいいのでは?と思ったのは撤回。
不思議ちゃんだわ、この人。
「あのねぇ、ノルマノルマって皆叫んでるでしょ? 営業は売らないと始まらないの。知ってもらうだけじゃ飯は食えないのよ!」
まだ研修の身の十文字くんにはノルマが乗っていないのでピンとこないのだろうか。
その分、私にオンされているんだけど。
「ご飯が食べられなくなるんですか? それは困ります」
若干ずれた返答に頭を抱える。
「そうでしょ? だから売らないといけないの」
彼との会話に疲れてきた私は、適当にクロージングしてしまった。