話す余裕はなさそうで、棚の整頓だけで退店したが、以前と変わらず元気な姿を確認してホッとした。
それにしても、私が担当でなければあんな目に遭わずに済んだだろうに。
大蜘蛛が悪いのだが、いたたまれない気持ちにもなる。
神の十文字くんが無情であれば、米山さんも命を落としていた可能性があるからだ。
「あれっ……」
そういえば、前にここでガイアの谷津さんとすれ違ったとき、十文字くんは彼のうしろ姿を目で追いながら、『疲れたオーラが出てる』と口にしていたっけ。
もしかして谷津さんは、あの頃からもののけに狙われていた?
そうだとしたら、私は周りの人たちに迷惑をかけ通しだ。
その後、何軒かの得意先に顔を出し新規開拓までチャレンジしたものの、心が沈んだままだった。
周囲に迷惑をかける自分の存在がうらめしいのはもちろんあるが、いつもなら十文字くんに足りないところを指摘したり、これからの方針を話し合ったりしていたのにそれがないからだ。



