その能力の高さは、嫌というほど見せつけられた。
あれほど大きな蜘蛛が、米山さんを盾にしなければ敵わないとわかっていたほどなのだから。
「それで、ちょこちょこ素が出てしまわれて。怒りが頂点に達するなど感情が高ぶると、完全に言動が神のほうに傾いてしまい……」
「あっ」
それ、串さとの中島さんに襲われたときとか、蜘蛛が憑依した深沢さんに迫られたときのこと?
たしかに別人だった。
「そっか。それじゃあ、中島さんももののけだったのね」
「いえ、あの人はただの女タラシだそうです。志季様は、もののけじゃないのに引っかかるあやめ様にあきれていらっしゃいました」
「あはは」
こんな幼い子に指摘されては、穴があったら入りたい気分だ。
「人間の〝十文字志季〟は単なる箱というわけでもなく、人格があります。それを神の志季様がうまくコントロールするということも修行の一環でした。しかしそもそも、ふたつの異なる人格をバランスよく共存させるのは難しく、苦労されていたのです」



