「私もまた聞きなのですが、いわゆる戦国時代におひとりお生まれになったそうで」
「そんな昔?」
「はい。だからこそ、ここぞとばかりにあやめ様を狙っているわけです」
絶望で脱力しながらも、さらに尋ねる。
「それでその人はどうなったの?」
「そのときも高天原よりひとりの神が地上に下りられて、お守りしていたそうです。ただ、時代が時代でしたので、もののけを遠ざけている隙に、人間に殺されて亡くなられてしまわれたとか」
そのときの神の心情を慮ると胸が痛い。
必死に守っていただろうその人が、まさか人の手によって命を落とすとは思っていなかっただろう。
複雑な思いに支配されて黙っていると、銀くんは続ける。
「この度も、あやめ様に手を出されて、不死の力を持ったもののけに地上を支配されては困ります。そのため、あやめ様をお守りすることとなりました」



